連続光学バイオプリンティングで、3次元細胞培養と組織工学を加速

BIONOVA Xは、幅広いバイオマテリアル(生体材料)や生きた細胞に対応した、世界初の光造形式(DLP – Digital Light Processing方式)のバイオ3Dプリンタです。標準規格のプレート(6、12、24ウェル)の各ウェルの中に、直接プリント(バイオファブリケーション)を行うことができます。使用するウェルプレートは底面がガラス製なので、ライブセルイメージングや自動液体分注といったダウンストリームの実験とシームレスに統合できます。BIONOVA Xは、生物学、生化学、材料科学、そしてソフトウェア技術の全てが収束した製品です。今後バイオ技術が発展するにつれ、技術の進歩の基準となるでしょう。BIONOVA Xは、マイクロスケールで連続的にプリントする技術(特許取得済み)を搭載し、圧倒的な高分解能と、幅広いバイオマテリアルや細胞との互換性により、3次元細胞培養、組織工学、疾患モデリング、医薬品開発など、様々な用途において効率を改善します。この新しい光造形方式バイオプリンタにより、これまで想像もつかなかったようなアプリケーションの創出が期待されるでしょう。

BIONOVA Xの原理

照射用のデジタルマイクロミラーはウェルごとに調整可能で、感光性プレポリマー溶液中に、液浸プローブを介してフォトマスクを照射します。同時に、3軸の電動ステージがプレートの動きを制御します。BIONOVA Xは、光源起動、フォトマスクパターン配列、電動ステージの動きを同期させることで、高速連続バイオプリンティングを実現しています。この新規光造形技術では、押出式のバイオプリンタと比較して、造形にかかる時間が大幅に短縮されました。

図1. A) BIONOVA Xによる、標準規格のマルチウェルプレートへのウェル内直接プリントの模式図。B) BIONOVA Xを用いた、分岐のあるチューブ構造の高速連続光学バイオプリンティングのタイムラプスイメージ。

データによる裏付け

BIONOVA Xで精密にバイオプリンティングした3Dマイクロピラーアレイに幹細胞を播種し、心臓組織へと成熟させた社内研究(アプリケーションノート) をご紹介します。マイクロピラーをウェル内に直接プリントすることで、従来の顕微鏡で心筋力をリアルタイムに可視化し、非接触で測定することができました。さらに、専用のウェルプレートは底面がガラスでできているので、バイオプリントモデルをウェルから取り出す必要がなく、特性評価を従来のワークフローに統合することができます。このプレートは標準的なサイズなので、自動液体分注装置やライブセルイメージングシステムなど、他の自動化機器とも簡単に連携することができます。

BIONOVA Xは、スピード、精度、細胞生存率の高さに加え、同じ構造体の中で機械的性質(物性)を調整できるなど、新たな可能性をもたらします。架橋密度などは、ミクロン単位の高精度で調整が可能です。BIONOVA Xの再現性の高さを検証した、別の社内研究のデータはこちらになります。

光造形式バイオプリンティングがさらに高速化

連続光学プリント技術(特許取得済み)により、従来の光造形式バイオプリンティングにはなかったスピードが実現しました。当社の社内研究では、サイズ60×135 μmから135×135 μmのマイクロピラーを8セット、24ウェルプレートにBIONOVA Xで作製しました。この連続光学バイオプリンティング方式では、同一のマイクロピラー192セットを、20分未満で作製し、従来のバイオファブリケーションでのスループットを飛躍的に向上しています。

お問い合わせ:

BIONOVA Xの活用方法や製品情報について詳しく知りたい方は、今すぐご相談ください。

確かな再現性

薬物アッセイで、同一機能の組織モデルを何百個も必要とする場合、スフェロイドを形成する自己組織化された共培養細胞では、目標達成率が低いことが懸念されます。これは自己組織化した細胞は、スフェロイドごとに構造が大きく異なるという欠点があるからです。一方、BIONOVA Xは、モーター駆動のステージを使い、3軸を自動で移動します。X軸とY軸は10ミクロン、Z軸は4ミクロンの精度を実現します。この精度により、一貫して再現性の高い生体組織足場が得られ、薬理学的発見、疾患モデリング、患者に合わせた薬物有効性試験の加速につながる可能性があります。

機械的特性の微調整が可能

BIONOVA X用の中空プローブは、架橋密度を制御するという独自の特徴を持ち、同じ足場内で機械的特性を細かく調整することが可能です。『グレースケールプリント』と呼ばれるこの機能は、異なる領域の光照射を、空間的に制御することができるのです。研究者がグラデーションの精度にこだわる理由とは?バイオプリンタで肝臓を模倣したモデルを作製した社内研究において、当社のアプリケーションサイエンティストは、露光時間と特定部位の硬さの間に正の相関関係があることを発見しました。つまり、この新規光造形技術を使えば、研究者はプリントパラメータを選択、あるいは組み合わせることで、最終的なプリント構造物が、本来の組織で見られる硬さの変化を反映させることができます。また、このような硬さの勾配を複数の構造体で一貫して再現することで、in vivo 環境下でのアッセイをハイスループットで実行することができます。

幅広いバイオマテリアルと細胞を使用できる光造形式バイオプリンタ

光造形式3Dプリント技術の中には、独自のインクを使用する必要があるものや、細胞に優しくないものがありますが、BIONOVA Xはその常識を変えようとしています。この汎用性の高いバイオプリンタを土台として、研究者は光架橋性ハイドロゲル(自作や非純正のものも含む)を使用することができます。また、細胞、コラーゲン、脱細胞化ECM、成長因子などの非光架橋性バイオマテリアルを組み入れることもできます。このような非光架橋性材料を、当社の光架橋性ハイドロゲル製品にあるようなキャリア成分と混合することも可能です。当社は、PEGDA、アルギン酸、ヒアルロン酸、ゼラチンなどの基材を用いた新しい製剤など、豊富に取り揃えています。架橋のプロセスとしては、BIONOVA Xの405nmの発光ダイオード(LED)によるバイオプリントで、光架橋性材料が光重合される際に形成されるポリマーネットワークに非光架橋性材料が捕捉されることで、架橋することができます。

光架橋性バイオインクを独自に開発する場合は、お気軽にご相談ください。当社の親会社であるBICOの傘下企業Advanced BioMatrix(ABM)は、再構成可能な基材を豊富に取り揃えています。

細胞にとってやさしい環境

BIONOVA Xは、バイオプリンティング用の生細胞と光架橋性ハイドロゲルの混合が可能なだけでなく、細胞の生存率を最大化するための機能を備えています。まずBIONOVA Xは、405nmの発光ダイオード(LED)を採用しているため、細胞に優しい光を照射します。また、温度調節が可能なため、様々な種類の細胞にも、最適な条件で使用することができます。さらに、高速連続光学プリントにより、プリント後の細胞を素早くインキュベーターに移動させることができます。構造物の複雑さにもよりますが、こちらの社内研究では、24ウェルプレートのバイオプリントを20分以内に完了させることが実証されました。

圧倒的に優れた滅菌環境を保証

BIONOVA Xは、コンパクトなサイズと特殊な消耗品により、無菌環境を維持することができます。このバイオプリンタは、通常の実験室の安全キャビネットに簡単に収まるサイズです。サイズは51.5 x 38.0 x 44.1 cm、重量は約41kgです。さらに、特殊な使い捨てプローブ(滅菌済)は、連続で最大24時間、プリントに使用することが可能です。その他の消耗品は、標準規格のガラス底マイクロプレート は、6、12、24ウェルの3種類でご用意しております。

BIONOVA Xで、一貫したワークフローの自動化を実現

従来の光造形式バイオプリンタは、1つの液槽(バット)でしか構造物の作製ができませんでした。BIONOVA Xは、人為的なミスや細胞へのダメージ、またハイスループットスクリーニングのスケールアップの妨げとなる、手動による構造物の移動作業を不要にしています。標準プレートに直接プリントするため、解析用にサンプルを手作業で移す必要がありません。また、インキュベーター内での長期の細胞培養や、ライブセルイメージングも、同じプレートで行うことができます。また、当社のグループ企業であるDISPENDIXのリキッドハンドリング装置『I.DOT』や、CYTENAのイメージング装置『CELLCYTE X』といった、他の自動化装置への移し替えも簡単に行えます。プリントに使うプレートには接着式と非接着式があり、バイオプリントしたモデルは、接着性プレートの場合は底面に架橋し作製、非接着性プレートでは底面から簡単に取り外すことが可能です。