3Dバイオプリンティングによる再生医療用機能組織の作製

3Dバイオプリンティングを用いた再生医療(オンデマンドでの臓器・組織再生)に関する論文で、これまで以上に多くの研究者が当社のバイオ3Dプリンタを引用しています。

再生医療のためのバイオプリンティングとは?

再生医療は、自然治癒力を増幅させたり、損傷した組織の機能を代替することを目的としています。この急成長中の医療分野には、幹細胞治療から医療機器、人工臓器、組織工学的臓器に至るまで、あらゆるものが含まれます。 後者については、研究者が自己の血管、心臓弁、筋骨格系組織、軟骨、皮膚などを作り出しています。 

3Dバイオプリンティングで臓器提供者不足を緩和

臓器ドナー登録を促す積極的な啓発活動にもかかわらず、10万人以上の臓器不全患者が待機リスト上にいます。アメリカ合衆国保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)によると、1日に17人もの移植待機患者が命を落としています。 

3Dバイオプリンティングは、デノボ(de novo)臓器の 調達に大きな期待が持てるとして、多くの研究者が注目しています。近年の進歩により、3D細胞培養や組織工学技術は、臓器のバイオファブリケーションや再生医療のための実行可能なソリューションと見なされています。BIO Xのような押出式バイオプリンタから、バイオディスペンサーBIO CELLX、光造形式BIONOVA Xまで、最先端の組織工学機器はかつてない精度と精密さで、自動化を実現しています。

すでにバイオプリンタで作られた臓器は?

機能的な組織を実現するためには、バイオエンジニアリングにおける細胞外マトリックス(ECM)の微調整、最適な細胞密度の決定、血管新生、不均一性、生着、化学シグナル伝達、組織特異的機能の実現などが課題となっています。バイオプリントによる臓器や組織には、 脊髄心臓弁膵臓などがあります。平らな組織は心臓のような複雑な臓器に比べてバイオプリントの難易度が低いため、臓器によって進歩に大きな開きがあります。

角膜

臨床応用という点では、3Dバイオプリンティングによる角膜は非常に高い可能性を持っています。ニューカッスル大学(Newcastle University、イングランド)の研究チームは、INKREDIBLEを用いて、角膜ケラチノサイトの高い生存能力を示す角膜の作製に成功しました。一方、トルコのマルマラ大学(Marmara University)を拠点とする別のチームは、正常な眼圧とその他の角膜機能をサポートする角膜組織のバイオプリンティングについて発表しました。また、フロリダA&M大学(Florida A&M University、米国)の研究者らは、最長2週間生存可能な角膜基質等価物を迅速にバイオプリントするプロトコルを考案しました。

皮膚

3Dバイオプリンティングによる皮膚組織の移植は、臨床の現場で目覚ましい成果を上げています。従来の皮膚移植では、一般的に血管の確保が不十分でした。しかし、レンセラー工科大学(Rensselaer Polytechnic Institute、米国)の研究グループは、BIO Xで皮膚組織等価物の3Dバイオプリントを行い、マウスに移植したところ、4週間以内に微小血管の形成と灌流が認められました。同時に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA、米国)の研究チームは、INKREDIBLEを使用して多層・多細胞の皮膚モデルを生物工学的に作製しました。

スウェーデンの研究グループは、当社のバイオ3Dプリンタ『INKREDIBLE』と同軸プリントで、骨専用のバイオインク『CELLINK BONE』を用いた骨組織のバイオエンジニアリングを実施しました。著者らは、同軸プリント用の付属装置を使用することで、バイオプリント後に細胞の生存率を維持する安定した足場が得られることを示しました。

生殖器官

ある研究では、3次元スキャフォールド(足場)を用いて、人工卵巣を培養し、マウスに移植したところ、生きた子供が誕生しました。一方、華中科技大学(Huazhong University of Science and Technology、中国)の研究グループは、卵胞の成長、発育、移植をサポートするマウス細胞の卵巣足場をバイオプリントすることに成功しました。この結果により、生殖に関する疾患の治療への臨床応用が大いに期待されます。

幹細胞治療

幹細胞は、組織再生のパラダイムシフトを引き起こしました。また、幹細胞は組織再生やヒトの病気の研究のための無限の細胞源となります。ヒトの人工多能性幹細胞を再プログラムすることができれば、病気のメカニズムや表現型の多様性を理解するのに役立つと主張する研究者もいます。

軟骨

アルバータ大学(University of Alberta、カナダ)の研究室では、INKREDIBLE™ LifeInk® 200 コラーゲンを使って、ヒト鼻軟骨細胞を3Dバイオプリントし、マウスモデルで皮下移植後も安定した移植片を作製しました。