神経組織のバイオプリンティング、究極のユーザーガイド

バイオプリンタ初心者も、BIO Xを初めて使う方も、先日公開された「Protocol for Printing 3D Neural Tissues Using the BIO X Equipped with a Pneumatic Printhead(空気圧プリントヘッド搭載BIO Xによる3D神経組織プリントのプロトコル)」は必読です。

ビクトリア大学(カナダ)で12年間勤務し、先日生体工学部長として3年間の任期を終えたStephanie Willerth博士が率いるWillerth Laboratoryは、ポスドクから異分野間の大学院生や学部生まで、高い能力の研究者を育成してきました。また、Axolotl Biosciencesのフィブリンベースのバイオインクなど組織工学と再生医療の発展に役立つ新しいツールを開発し、評判を得てきました。

研究室の学部研究生であるJosie Chrenek氏は、押出式バイオプリンタ『 BIO X™』を用いて神経組織を3Dバイオプリントするためのステップバイステップ・プロトコルを、Star Protocols(査読付き)に共著で掲載しました。このプロトコルでは、高品質の3D生物学的構造物を作製するための消耗品の装填方法、カートリッジをプリントヘッドに装着する方法、プリントパラメータの設定方法について説明しています。出来上がった構造物(モデル)は、37℃のインキュベーターで定期的に培地を交換しながら最長6週間培養することで、最高レベルの細胞生存率を確保することが期待できます。

バイオプリンティング入門書 - PDF版

このプロトコルでは、試薬の準備、機器の滅菌、標準的な培養皿やアガロースバスへのプリント、さらに出来上がった造形物の培養までを詳細に説明されています。まるで、お気に入りの料理番組のレシピ本のようにわかりやすい。Willerth博士の研究チームは、バイオインク1mLあたりに必要な架橋剤の量、各ステップの所要時間、撹拌機(プレート)の推奨温度設定、構造物のおおよその作製数など、具体的な内容を記載しています。おまけに、必要な器具の写真には、各消耗品の名称が記載されているのです。

また、バイオプリンタ(BIO X)のセットアップ、シリンジへの細胞培養用バイオインク充填(動画付き)、プリントヘッドへのカートリッジ装着などを解説しています。タッチスクリーンを使った直観的な操作で、CADファイルの読み込み、バイオインクのプロファイル選択、ノズル先端のキャリブレーション、圧力やプリント速度、インフィル密度(造形物内部の体積割合)の設定などを行うことができます。

この入門書の中では、注意事項が強調されています。その一つは、凝集やフィブリン形成を避けるために、バイオインク成分の混合はプリントの直前にする必要があることを説明しています。また、BIO Xの特許技術であるクリーンチャンバーについては、使用の際は必ず紫外線を遮断するBIO Xの保護扉を閉めるよう注意を促しています。

その他のお役立ち情報

例えば、細胞培養プレートやアガロースサポートバスにプリントする場合、簡単に参照できるよう、推奨プリントパラメータの早見表が用意されています。また、バイオマテリアル、試薬、細胞株、消耗品など、プリントの設定に必要な機器や消耗品の一覧もあります(製品番号とサプライヤーのウェブサイトが含まれています)。また、バイオインクの気泡やノズル先端からの漏れといったよくあるトラブルの解決法を提示し、ユーザーに優しく解説しています。最後に、汎用性の高いバイオプリンタ『BIO X』があらゆるバイオマテリアルに対応するのと同様に、このプロトコルは、架橋を必要とする押出用バイオインクに対応するあらゆる細胞株に適用することが可能です。

本書は、学部生からプロフェッショナルまで、パラメータ設定のチートシート(虎の巻)を必要とするすべての人に必読のオープンアクセス・ハンドブックです。こちらからダウンロード可能です。