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3Dバイオプリンティングで実現させる個別化医療
バイオ3Dプリンタとバイオディスペンサーは、バイオメディカルインプラント、バイオセンサー、スマート薬物送達(ドラッグ・デリバリー)デバイスなど、患者一人ひとりに合わせた治療薬の作製(バイオファブリケーション)を促進します。
生体適合性とアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形技術)の融合
個別化医療は、従来の「画一的な医療」から「患者一人ひとりの体格や生理状態に合わせた治療」に移行しつつあります。個別化医療の分野には、代替臓器、バイオメディカルインプラント、バイオセンサー、スマート薬物送達デバイスなど、あらゆるものが含まれます。しかし、これらの治療法は、生きた細胞を組み込む必要はないものの、生体適合性があり、細胞毒性がないバイオマテリアル(生体材料)で構成されている必要があります。従来の3Dプリンタは、他の分野でも同様に複雑なデバイスを製造していますが、これらの樹脂ベースのデバイスのほとんどは、バイオマテリアルを扱うことができません。例えば、人体で最も多く含まれるタンパク質であるコラーゲンは、温度や圧力に非常に敏感です。また、細胞を生存させるためには、無菌環境が必要です。バイオ3Dプリンタは、3Dプリンタの製造原理と生体適合性を融合させ、この10年間で個別化医療のブレークスルーを可能にしました。
自動投与と局所投与を可能にする、バイオプリント製の薬剤溶出パッチ
3Dバイオプリントによるスマート薬物送達デバイスは、患者の生体系と安全に相互作用することができ、自己投与による経口または局所治療で課題となる服薬コンプライアンス(服薬遵守)の改善に役立ちます。さらに、局所ドラッグデリバリーを可能にすることで、3Dバイオプリントによるスマート薬物送達デバイスは、抗生物質の全身投与に伴う副作用を最小限に抑えることができます。
心臓パッチ
ドラッグ・デリバリー分野での3Dバイオプリンティング応用例として、フィンランドの研究者グループは、BIO Xを使用して、損傷した心筋に5ヶ月間薬物を送達する心臓パッチをバイオプリントし、梗塞後の心筋再生に役立てました。また、ジョンズ・ホプキンズ病院(Johns Hopkins Hospital、米国)のバイオエンジニアリング・チームも、3Dバイオプリント心臓パッチで同様の成果を上げ、動物モデルに移植した4週間後の生存率が100%であったことを発表しています。
脳腫瘍治療用パッチ
パッチによる薬剤の局所投与は、心筋組織に限ったことではありません。当社のある顧客は、BIO Xを使ってハイドロゲルをベースにしたメッシュを3Dバイオプリントし、膠芽腫の脳腫瘍部分に数週間にわたって抗がん剤を投与しています。
3Dバイオプリントによる創傷治癒パッチで感染症を予防
3Dバイオプリンティングの2つの新しい利用法は、創傷治癒のプロトコルを打ち破り、個別化医療を進展させるもので、いずれも汎用性の高いBIO Xと生分解性ポリマーを組み合わせています。
バイオピアス
プリンス・エドワード・アイランド大学(University of Prince Edward Island、カナダ)の研究チームは、BIO Xで生体吸収性のスキャフォールドをプリントし、「バイオピアス(biopierce)」を開発しました。ピアスのスタッド部分に、薬剤(抗菌剤であるムピロシン)を含んだPLGA(ポリ乳酸-グリコール酸)をスキャフォールドの形で覆うことで、ピアスによる感染症を防ぎます。このバイオピアスは、ポリマーが分解しピアスで穴を開けた部分でのみ薬剤が吸収されるため、抗生物質の持続的な投与を可能にします。研究チームは、このプロトコルは他の創傷被覆材にも使用できると考えています。
糖尿病患者用創傷治癒パッチ
幹細胞の量産化
今後の展望
バイオセンサーとバイオエレクトロニクス技術
3Dバイオプリントによるマイクロ流体生体機能チップ(Organ-on-a-chip)デバイスに統合したバイオセンサーでポイント・オブ・ケア(POC)システムを革新する研究者として、当社のバイオプリンタは、ヒト細胞の有無にかかわらず、バイオエンジニアリングにおいて主要な役割を果たし続けるでしょう。