電磁液滴プリントヘッドによる細胞のプリント
当社の電磁液滴(EMD)プリントヘッドは、インクジェット技術を活用し、高速かつ高精度なプリントを可能にします。EMDプリントヘッドは加熱制御を内蔵しており、粘度の低いものから高いものまで、幅広いバイオインクのプリントが可能です。
装置の仕組み
EMDプリントヘッドは、電磁インクジェット技術を基に開発されました。バイオインク、ハイドロゲル、培地などの正確なドロップオンデマンド(DOD)式プリントや、接触式ディスペンスを必要とする研究向けのツールです。また、特殊な用途向けには、噴射式と接触式の両方のディスペンサーをサポートするために必要な機器も提供しています。
EMDプリントヘッドの大きなメリットの一つは、プリント速度を正確に制御できることです。マイクロバルブの開閉時間を1ミリ秒まで短縮し、サイクルタイムを最大2,500Hzまでの任意の周波数に上げることができます。これらのパラメータにより、流量や液滴量の微調整が可能になります。また、バイオインクの温度を室温から65℃の間で任意に設定することが可能なため、低粘度から高粘度のバイオインクをプリントすることができます。
EMDプリントヘッドを使った、細胞のバイオプリント方法
EMDの温度制御により、アルギン酸やGelMAといった低粘度バイオインクのバイオプリンティングが可能になりました。当社のBITEチームは、アルギン酸だけでもHepG2のクラスター化をサポートできることから、肝細胞株であるHepG2をアルギン酸バイオインクでテストする実験を計画しました。HepG2細胞は肝臓に集積しており、生体外で同様の形成を実現できることは、EMDプリントヘッドのバイオプリンティング機能が実証されることになります。
実験結果


BITEチームは、アルギン酸塩のバイオインクにHepG2を懸濁し、24ウェルプレートに5×5ミリの正方形をバイオプリントしました。実験7日目に撮影された明視野画像から、EMDによりバイオプリントされた造形物が高い生存率を示しており、優れた細胞生存能力であることがわかります。HepG2細胞は増殖し、丸みを帯びたトンネル状のクラスターを形成しました。これはアルギン酸の現象としてよくみられるものです。
バイオプリントしたHepG2細胞は、毛細胆管形成など肝細胞の典型的な特徴を示し、免疫マーカーABCC2(通称MRP2)を用いてこれらの構造を可視化しました。緑はABCC2、青は核を示しています。当社のアルギン酸バイオインクの光学的透明性は、バイオプリントされた造形物全体の免疫染色と可視化を可能にします。
この結果により期待される効果
BITEチームの成果は、EMDプリントヘッドを使用して確実に細胞をプリントできることを示すとともに、アルギン酸がバイオプリントモデルの中で成熟したHepG2細胞を支持する能力を有していることを検証しました。
これらの結果により、EMDプリントヘッドは、カプセル化されたバイオインクがなくても、細胞プリントをサポートできると考えられます。水のような粘性と直接的な構造組織を持つマテリアルをバイオプリントできるため、幅広い材料のプリントが可能になります。
このプリントヘッドを活用することで、細胞を含んだ表面コーティングや培地を含んだ細胞を狭い範囲にプリントしたり、バイオフィルムや勾配などの細胞単層膜をプリントすることができます。また、モデルやウェルプレート内の特定の形状に細胞を被覆させることも可能です。
次のステップとして
BITEチームは、EMDプリントヘッドを使った将来のプロジェクトについて、すでにいくつかのアイディアを持っています。当社の研究者は、GelMAやその他の低粘度バイオインクを使用して同様の実験を行い、プリント適合性や細胞生存率を評価することができます。より高い分解能やより複雑なモデルをプリントするための条件の最適化も行います。
私たちは、お客様のラボ機能を強化し、結果を最適化するための新しい方法を常に模索しています。CELLINKをフォローして、最新のプロジェクトや研究成果をチェックしてください。