FRESH 3Dバイオプリンティングで、より複雑な形状が可能に

FRESH(Freeform Reversible Embedding of Suspended Hydrogels)は、もともと、組織工学アプリケーションに柔らかい生体材料を使用する際に直面する多くの制限を解決するための3Dバイオプリンティング手法として開発されました。FRESH法による3Dバイオプリンティングは、ハイドロゲル構造物がプリント中に崩壊したり変形したりしないように特別に配合されたLifeSupport™バスにバイオインクを押し出すことによって行われます。イオン、酵素、pHバッファーなどを組み込むことにより、LifeSupport™内で幅広いポリマー架橋化学物質およびゲル化メカニズムをサポートすることができます。

FRESH法は、多くの組織工学者が選択するバイオプリンティングプラットフォームとして急速に普及しています。FRESH法は、あらゆるソフトゲル化バイオマテリアルのバイオプリントを、幾何学的な複雑さに制限されることなく、より高い分解能で実現します。またFRESH法は、標準的なバイオプリンティングのワークフローに組み込むことができ、BIO X™のような押出式バイオプリンタで実施することができます。バイオプリンティングを劇的に変化させ、研究者が複雑な組織構造と機能という差し迫った課題に取り組むことを可能にします。例えば、FRESHはインクの最適化という面倒な作業を不要にし、研究者は3D足場や組織のバイオプリントに移行することができるのです。

BIO X™でのFRESH法による3Dバイオプリンティングは、LifeSupport™を入れたディッシュをプラットフォーム上に用意し、プリント用ニードルの先端をディッシュ中央に落とすだけで、複雑な形状の造形を開始します。

FRESHバイオプリンティングにより期待される研究の方向性

FRESHプリンティングの精度を示す、灌流可能なチャネルを持つ腎臓の断面図。

1. 組織のような複雑な構造のプリンティング

FRESHプリンティングの主な魅力は、柔らかいバイオマテリアルから複雑な構造を作製できることです。この機能により、よりネイティブな組織に近い複雑な構造・組成を持つFRESHプリント構造物の世界が容易に実現できます。体内のあらゆる臓器や組織には、独特の構造や組成の複雑さがあり、技術者はバイオミメティックなアプローチでそれを再現しようとしてきました。心臓や腱組織のように、組織の異方性(方向性を持つこと)が組織の力学的特性や機能にとって重要である例では、より生理的に適切な組織構造を作製することの重要性が強調されています。最も重要なことは、FRESHバイオプリンティングが組織構造に限定されないということです。FRESHを用いることで、研究者は生物学的なテンプレートにとらわれないコンストラクトを設計することができます。組織機能の重要な機能パラメータを特定することにより、研究者は、コンピューターで作成された設計などの既存のツールを活用して、多孔性、機械的特性、構造と細胞の相互作用など、目的の組織機能に寄与する主要な機能をプリントした造形物に最適化できます。

灌流可能なチャネルを持つ右冠状動脈(RCA)のFRESH法によるプリント。BIO Xを使用(使用バイオインク:CELLINK)。

2. 血管新生組織の作製

FRESH法は、組織工学の応用において、マルチスケールの血管網を自由に設計・製作できる数少ない技術の一つです。組織の血管形成は何十年にもわたって科学者や研究者の想像力をかきたててきました。文献には、移植された構成物の血管形成、成長因子によって誘発される血管形成、灌流可能な単一チャネルを持つマイクロ流体デバイスの研究が豊富に掲載されていますが、これらはすべて、いつか完全に血管形成し、厚い(すべての寸法が1 cm以上)組織片を生かすことができるという目標によって推進されているのです。Pluronic F127やゼラチンなどのプリント用マテリアルは、バルクキャストマトリックス内に内腔構造を作製するための犠牲材として効果的に使用されてきましたが、内腔の直径は、プリントノズルからの押出し幅に制限されています。FRESHは、高分解能の形状(薄い血管壁や異なる直径での蛇行した血管構造など)のバイオプリンティングを可能にします。またFRESH法では、マイクロメートルからミリメートルのスケールで内腔と壁の厚さを制御し、医療用画像ファイルから得た3D分岐した階層的な血管構造を持つ、複雑で詳細な血管網を作製することが可能になりました。

2つの材料を使用してプリントされた埋め込み型RCAは、より複雑な血管モデルを研究者に提供します。

3. 複数のマテリアルによるバイオプリンティング

複数のマテリアルを単一のハードウェアプラットフォームでプリントする場合、研究者は多くの課題に直面します。まず、プラットフォームのハードウェアは、複数のツールヘッドを扱えるように設計されていなければなりません。また、それぞれのツールヘッドから異なるマテリアルを押し出す際には、ソフトウェアとうまく連動させる必要があります。BIO X™およびBIO X6™は、複数のツールヘッドシステムと使いやすいソフトウェアインターフェイスによって、これを実現しています。次に、おそらくより重要なこととして、マルチマテリアル造形物をバイオプリントする場合、ハードウェアは一つの容器で複数のマテリアルの分注とゲル化を可能にしなければなりません。バイオマテリアルのゲル化条件は多岐にわたるため、これは簡単なことではありません。FRESH法は、従来の3Dバイオファブリケーションとは異なり、イオン的、化学的、光化学的、酵素的、物理的ゲル化により架橋した複数のバイオマテリアルを1つのディッシュに同時にプリントすることができます。LifeSupport™にプリントする場合、ゼラチンと相性の良い酵素、イオン、化学物質を簡単に混合して、プリント材料のインク固有のゲル化を促進できるため、マルチマテリアルのバイオファブリケーションが容易になります。例えば、一般的にバイオプリントで使用される材料であるアルギン酸は、カルシウムイオンを混合したサポートバスにプリントでき、コラーゲンは、pH中性緩衝液で緩衝したサポートバスにプリントすると物理的に架橋することができます。この2つの異なるバイオインクを、pH中性の緩衝液とカルシウムイオンの両方を含むサポートバスを使用して、マルチマテリアルプリントで一緒にプリントすることができます。

BIO X™(バイオプリンタ)とFRESH法を組み合わせることで、これまで夢でしかなかった複雑なプリントや機能の新たな領域を切る開くことができます。

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