近い将来:

3Dプリンタ製の角膜で、角膜失明症の治療が可能に

Lumen-X-at-Pandorum.jpg
Pandorum Technologies社が開発した角膜模倣バイオインク(光架橋用)と、当社の光造形式バイオプリンタ『Lumen X』を用いて3Dプリントしたレンズ型人工角膜

3Dプリンタで作った人工角膜は、現在深刻な問題となっている角膜失明症の治療に役立つことが期待されています。 角膜失明症は、全世界で数百万人が直面している問題であり、角膜失明症と診断された人の数は約2,800万人にのぼると推定されています。この問題を解決するため、Pandorum Technologies社のような研究チームやイノベーターは、移植可能な機能性角膜組織の開発に熱心に取り組んでいます。

角膜失明症では、コラーゲンなどの角膜の重要な成分の生成がうまくいかず、角膜が薄くなり、視力が低下します。最終的には失明に至る危険性がありますが、唯一の治療手段は角膜移植手術です。そのため、角膜移植の需要が高まっています。しかし、ドナー角膜では到底対応しきれないほどの需要のため、3Dプリントによる人工角膜は、ドナー不足を解消するための明確な道筋を示しています。

Pandorum Technologies社の3Dプリント角膜で、角膜ドナー不足に挑む

機能的な角膜組織を開発する方法が、切実に求められています。インドのイノベーションの中心地であるベンガルールに拠点を置くスタートアップ企業、Pandorum Technologies社は、このチャレンジに真正面から取り組んでいます。同社の技術者、生物学者、研究者のグループは、機能的で移植可能な3Dプリント角膜の開発という明確な道筋をたどっています。

角膜の医療画像を撮影し、その画像をもとに3Dモデルデータを作製、『BIO X』で角膜モデルを3Dプリントします。この角膜モデルは、同社内で開発したバイオインクを使ってプリントしています。『角膜レンチキュール』と名付けられたこの製品は、角膜の形と大きさを模倣し、長期間の生体への統合に必要な物理的・生物的特性をすべて備えています。Pandorumチームの研究は、ドナー角膜不足を解消する有効なソリューションにつながりました。これにより、角膜失明症に苦しむ多くの患者さんが視力を取り戻すことができるのです。 Pandorumチームは、BIO Xに加え、光造形方式(DLP)のバイオプリンタ『Lumen X』を活用し、『角膜レンチキュール』の幾何学的形状の試作と微調整を行なっています。

2.-Cornea-lenticule-bioprinted-with-cells.jpg
バイオプリントしたレンチキュール内で、角膜間質幹細胞の維持に成功。画像の緑色は、バイオプリントによる角膜小胞に均一に分布する生きた細胞集団を示している。また下段のパネルは、1つの平面を捉えた共焦点画像と、複数の平面からの画像を3次元で再構成し、マトリックス全体の細胞分布を示している。

人工角膜の移植 - インドと米国でヒトへの試験を開始

Pandorum Technologies社は、すでにin vitro試験や動物モデルで大きな成功を収めています。現在、同社の人工角膜は、ヒトでの試験という重要な段階に入りました。この治療法を実際の患者に提供し、世界中の人々の視力を回復させるために必要な重要な証拠を集める時が来たのです。この臨床試験は、インドと米国にある複数の病院で行われる予定です。

Pandorum Technologies

同社の概要と活動については、https://pandorum.com/ をご覧ください。

Imagine. Bioprint

あなたが想像する、未来の健康とは?バイオプリンタと3次元細胞培養の力を活用し、研究の限界を押し広げて、発見を加速させましょう。