個別化医療の実現に向けて:患者固有の腫瘍モデルをバイオプリントし、個別の薬剤検査を実施するCarcinotech

Ishani Malhotra氏は、生検サンプルからの細胞を使用して患者固有の検査用モデルをバイオプリンティングするエジンバラを拠点とするバイオテクノロジー企業であるCarcinotechのCEO兼創設者です。独創的な同社の研究チームに、当社の専門的サポートがどのように貢献できたかをご紹介します。

「乳がん啓発月間は、乳がんの治療オプションをより多く開発するために行われている驚くべき進歩を強調する機会でもあります。」

なぜ乳がん啓発月間が重要なのですか?

毎年行われる乳がん啓発キャンペーンは、女性や男性 (乳がん罹患者)に対して、病気を早期に発見するためのセルフチェックや検査予約の重要性を理解してもらうことを目的としています。また、乳がん啓発月間は、乳がんに対するより多くの治療法を開発するために、研究者たちが行っている素晴らしい進歩に注目する機会でもあります。

Carcinotechは、乳がん研究をどのように改革しているのでしょうか?

Carcinotechは、患者由来のがん幹細胞、初代細胞、確立された細胞株を用いて、3Dプリントによる腫瘍モデルを製造しています。当社は、迅速、倫理的、持続可能、正確、かつパーソナライズされた薬物検査を可能にする検査プラットフォームを開発しました。患者の遺伝子構成は異なるため、ある人に効く薬が他の人に効かないことがあります。化学療法剤の中には、例えば テモゾロマイド(temozolomide)のように、患者の50%にしか効果のないものがあります。そのため、ある遺伝子変異を持つ残りの50%の人たちが、がんとの闘いに役立つ他の開発中薬剤を確実に特定し、処方できるように、個別の薬剤検査を実施することが重要です。

3Dプリンタで作製したがんモデルは、個別の薬剤検査にどのように役立っているのでしょうか?

Carcinotechは、診断された患者から生検サンプルを受け取ります。例えば乳がんの場合、トリプルネガティブの乳がん細胞を分離し、in vivo 環境を再現した腫瘍の3Dモデルをバイオプリントします。そして、240種類の化合物ライブラリの中から複数の抗がん剤を患者の腫瘍モデルで検査し、どの薬剤が患者に最も良い治療効果をもたらすかを確認することができます。このレポートを臨床医に送ると、その化合物がすでにラボで患者の細胞で検査されていることがわかり、より良い治療方針を決定するのに役立ちます。

3Dバイオプリントされた乳がんモデルの組織像

貴社の乳がん3Dモデルでは、患者のサンプルから薬の推薦まで、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?

組織サンプルの取り寄せから、処理、バイオプリント、そして薬剤試験までで約3週間かかります。最も難しいステップは、生検サンプルを処理し、バイオプリントに必要なだけの細胞を抽出するのにかかる1週間です。一方、バイオプリンティングはそれほど時間はかかりません。各プレートは5分でプリントできます。14日間の培養後、バイオコンストラクトが最も健全な状態になったときが、化合物の検査に最適なタイミングです。30日や60日を超えて実験したこともありますが、ネクローシスと呼ばれる、互いに接近して成長する細胞が死滅し始める傾向があるため、14日に落ち着きました。

CELLINKとのパートナーシップは、貴社のがん研究にどのような影響を与えましたか?

昨年、CELLINKと提携し、最高のバイオプリンティング技術を提供するBIO X™を利用できるようになりました。バイオプリンタとバイオインクに関する技術的な質問に24時間以内に回答してくれるCELLINKの優れたサポートチームには、スタートアップ企業として大きな恩恵を受けています。また、CELLINKは必要に応じて交換部品を送ってくれるなど、非常に迅速な対応をしてくれています。特に新型コロナウイルスの期間中は、ビデオ通話でパーツを正しく取り付ける方法を教えてくれたので、非常に助かりました。彼らの素晴らしい製品と優れたサービスが利用できることは当社の研究に役立っており、今後もCELLINKとの関係を継続したいと思っています。

「CELLINKのバイオインクの品質管理は非常に徹底されているので、信頼できます。」

CELLINKの他の製品をお使いですか?

CELLINKのバイオインク「LAMININK 411」を使って脳腫瘍をプリントすることに成功しましたが、トリプルネガティブ乳がんモデルのプリントにはどのバイオインクが最適か、まだ検証しているところです。CELLINKのバイオインクを発注して1年以上になりますが、CELLINKの品質管理は非常に徹底しており、信頼できます。例えば、あるバイオインクのバッチに問題があると報告すると、CELLINKは迅速に問題を解決し、すぐに代替のバッチを送ってくれました。

腫瘍学と乳がん研究の将来に期待することは何ですか?

Carcinotechの検査用モデルは、人間の組織をより正確に複製し、前臨床試験での動物使用を最小限に抑えることが可能な疾患モデルを使用して、何千もの薬剤候補となる抗がん剤化合物をハイスループットでスクリーニングすることも可能にします。今後10年間で、乳がん研究により効果的な薬剤の組み合わせや免疫療法が開発されると期待しています。ただし、乳がんが完全に治癒可能になるまで、CELLINKと同様に、機関、企業、研究者が協力する必要があります。

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