ラボから臨床へ:iPS細胞で軟骨を3Dバイオプリントし、膝関節損傷の治療法開発に成功

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幹細胞研究を実用的な治療法に転換し、患者の生活の質(QOL)を向上

個別化医療は、多くの研究者にとって関心のあるテーマですが、患者一人ひとりの病気に合った治療法を開発するためには、多くの時間とエネルギーが必要となり、非常に難しい目標でもあります。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のStina Simonsson教授のチームでも、このような研究に取り組んでいます。このチームは、幹細胞についての深い知見を持ち、この素晴らしい構成要素を再プログラムすることで、人生を変える治療法を生み出す方法を開発しました。

膝の怪我・損傷に対する治療法開発

現在、45歳以上のスウェーデン人の4人に1人が、何らかの変形性関節症に苦しんでいると言われています。Simonsson博士のグループは、この広範囲に及ぶ問題を解決するために、試験管の中でミニ膝を開発し、iPS細胞を培養して軟骨細胞に分化させることから研究を始めました。このミニ膝は、病気のメカニズムや軟骨がすり減る原因を解明する道を開くのに役立ちました。

Stina Simonsson先生のコメント

iPS細胞を包埋したインプラントをバイオプリンタで作製し、完璧なフィット感を実現

Simonsson博士のチームは、幹細胞が軟骨に分化する原因を理解した上で、患者のスキャンを取り込み、BIO Xを使用して患者固有の構造物(モデル)を開発することで、新たな個別化を実現したのです。当社のバイオインクに近い組成のナノセルロースとアルギン酸で、iPS細胞を含んだ構造物をプリントしました。バイオインクの最適化により、プリントの忠実度が上がっただけでなく、さらに重要なことは、プリント中の安全性であり、結果として、高い細胞生存率と高い分化確率の確保ができたことでした。このプロセスでは、II型コラーゲンやGAGSなどのECMタンパク質が豊富に形成され、堅牢な構造物が必要とされました。このバイオプリントによって作られた軟骨は、訓練された外科医の目でさえも、生体の軟骨との見分けがつかないほどでした。

基礎研究から臨床治療まで、要求に応じた軟骨を

軟骨をオンデマンドでバイオプリントできることを実証した研究チームは、この研究を臨床治療に応用することを目指しています。そのために、研究チームはいくつかの課題に直面しています。そのひとつが、バイオインクと同じレオロジー特性を持ちながら、よりヒトに近い構造を持ち、研究を治療に発展させる際に立ちはだかる規制の壁を打破することが可能なマテリアルを見つけることです。

ヨーテボリ大学 Stina Simonsson博士
“CELLINKの技術とバイオインクは、私の研究を大いに助けてくれました。彼らのサポートがなければ、ここまで研究を進めることはできなかったでしょう”とStina Simonsson先生は述べています。